これから始める官民連携事業
1 はじめに
「官民連携」や「民活」という言葉を目にする機会が増えてきたと思いませんか?例えば、PFI、空港の民営化、上下水道の民営化、MICEの誘致などです。
一方で、官民連携事業を実現するための具体的なスキームや実務的な注意点が分からないという声もあろうかと思います。
そこで、このファイナンスコラム:官民連携シリーズでは、官民連携事業の基本的な考え方・知識から契約書の注意点までを習得することを目的に、官民連携事業に関わる上での必須事項をまとめています。
官民連携による施設更新の必要性を感じている地方公共団体、これから官民連携事業への参入を考えている民間事業者など様々な立場の方がいると思いますが、初級から中級以上の知識を一気に身につけて立ち遅れることなく官民連携を一つの強みにしましょう。
2 官民連携とは
(1) どういうものか
PPP(Public Private Partnership)とも表記され、官と民が協働して行う事業全般を指します。単純な業務委託から指定管理者制度なども含まれます。
特に、PFI(Private Finance Initiative)に関しては、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(いわゆる、PFI法)が制定されています。
また、公共施設等運営権(いわゆる、コンセッション)はPFI法の改正により実現し、都市公園法の改正により、いわゆるPark PFI(パークPFI)も注目されています。
→参考:コラム「官民連携:その施設に適した官民連携手法の探し方~スキームによる分類~」
(2) なぜ注目されているか
- 更新時期の到来
PFI法施行から20年近く経過し、多くのPFI施設が当初の維持管理期間の終了を迎える時期にあたります。そこで、当該施設を次にどのように維持管理・運営するか検討される段階にきているのです。 - 厳しい財政状況
公共施設は、原則的に、公けの用に供するために設置されるものであり、その運営主体は各自治体です。施設の老朽化が進み更新しなければならないものの、各自治体は必ずしも潤沢な資金を有しているわけではありません。そこで、民間事業者の力を借りる必要が生じているのです。官民の協働がなぜ意味あるのかは、下記「(3) 官民連携の目的」でお話しします。 - PPP/PFIの優先的検討
上記を踏まえ、政府は、人口20万人以上の地方公共団体が施設設置・更新をする際には、PPP/PFI手法を優先的に検討するよう求めました。
(3) 官民連携の目的
民間の資金、知識、経験、ノウハウを取り入れて(民活)、より効率的な公共サービスを提供することです(官民連携)。
<具体的には・・・>(民活)
① 民間事業者は特定の事業に関する専門性を有している
② 官よりもより最新の技術を有し、利用者のニーズを掴みやすい
- ノウハウを駆使することで、同じ施設でもより安く建設・維持管理できる
- ニーズに合わせて過剰な設備を廃し、安く建設・維持管理できる
- ニーズに合っているので、より質の高いサービスを提供できる
<結果的に・・・>(官民連携)
効率的=①より安く、②少なくとも今までと同質以上の公共サービスを提供できる
厳しい財政状況の中で、公共施設を維持しなければならないという使命を全うできます。
(4) 官民連携手法の理解の必要性
民間事業者の力に頼るといっても、全ての責任を民間に移転することはできません。民間事業者には負担できるリスクの限界があり、官と民で適切にリスクを分担しなければ官民連携は実現しません。
このリスク分担・リスクアロケーションが官民連携成功のための重要な要素になります。
そして、リスク分担を適切に理解するために、以下の各事項を理解する必要があります。
- 官民連携手法のスキーム
- スキームを契約書でどのように構築するか?
- 契約書どのようにリスクを分担するか、その考え方・注意点は?
3 官民連携の支援措置
政府は、以下を決定し、官民連携を推進する姿勢を示しています。
- 経済財政運営と改革の基本方針2015
- 多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針
- PPP/PFI手法導入優先的検討規程策定の手引
- PPP/PFI手法導入優先的検討規程 運用の手引
これらの計画を実現するために、各種の支援措置もあります。
- PPP/PFI地域プラットフォーム協定制度(内閣府、国土交通省)
- PPP/PFI導入支援
- 国土交通省PPP(Public-Private-Partnership)協定 など
- 当職らは、PPP/PFIプロジェクトチームを立ち上げ、国土交通省PPP協定のパートナーに選定されています(本コラム執筆時点)。
- 関東、中部、北陸、関西の複数自治体にお招きいただき、セミナーや質問会を開催しました。
官民連携事業は、地方公共団体にとっては避けては通れない手法であり、民間事業者にとっては事業獲得のチャンスです。この機を逃さずに、官民連携をしっかりと強みにしてください。
コラムだけでも十分な専門的知識を得ることができます。
さらに、弁護士の実務的かつ法律的な感覚・考え方をお伝えすることで、官民連携のより深い理解につながるように、社内研究会、講演活動、質問会など行っています。
ご要望に合わせてプランニングしますので、以下の弁護士名をクリックいただき、お問い合わせフォームよりご要望・ご質問をお寄せください。