その施設に適した官民連携手法の探し方~スキームによる分類~

官民連携事業の目的を端的に説明すれば、「民間の資金、知識、経験、ノウハウの活用を通じて、公共サービスを効率化すること」にあります。ただし、一言に「公共サービス」と言っても、その中身は多種多様であり、そのため、官民連携事業でも中身に応じて適切な手法を採用する必要があります。

そこで、今回のコラムでは、官民連携事業で採用される手法やスキームの基本的な分類を説明します。分類の視点としては、①事業上の役割分担、②施設の所有形態、③収益モデルの3つの観点から説明します。

1 事業上の役割に着目した分類

例えば、ある地方公共団体が、観光客に訪れてもらえるよう、地域の文化や歴史を伝えるための施設を造ると想定しましょう。この場合、地方公共団体は、まず、その施設の設計を考え、建設する必要があり、建設後は、展示の中身や来訪者からの料金の徴収など、施設の運営をしていくこととなり、さらに、年数の経過に応じて改修等も必要となってくるでしょう。

このように施設運営の過程で生じる設計・建設、運営管理、整備・回収等の役割のうち、どこまでを民間に任せるかによって、複数の手法が存在します。手法の種類とそれぞれの概要は、以下の通りです。

  • PFI
    ⇒民間事業者は、公共と協働で、公共施設等の設計・建設、維持管理及び運営を行う。
  • 指定管理者制度
    ⇒民間事業者は、管理者としての指定を受け、公共施設の管理を行う。
  • コンセッション
    ⇒民間事業者は、独立採算で公共施設の運営等を行う(施設の運営権のみを持つ)。
  • Park PFI(パークPFI)
    ⇒民間事業者は、公園施設の設置、施設の収益を活用した整備・回収等を行う。

地方公共団体が地域の文化・歴史の展示施設を造るという例であれば、施設の設計・建設を全て地方公共団体側で行い、民間事業者にはその管理や運営のみを任せるということであれば、指定管理者制度やコンセッションによることも考えられます。他方、民間事業者の提案に応じて展示施設の新設を決めたというような場合であれば、その設計・建設段階から、民間事業者のノウハウを利用すべく、PFIやパークPFIの手法を検討することになるでしょう。

2 施設の所有形態に着目した分類

次に、対象となる公共施設の所有形態も、事業や施設の性質に応じて、複数の方式が存在します。代表的な方式とそれぞれの概要は、以下の通りです。

  • DBO方式(Design, Build, Operate)
    ⇒施設の所有権は、常に公共側に帰属。
  • BTO方式(Build, Transfer, Operate)
    ⇒施設の所有権は、建設中は民間事業者に帰属。建設後、公共側に施設の所有権を移転。
  • BOT方式(Build, Operate, Transfer)
    ⇒施設の所有権は、事業期間終了まで、民間事業者に帰属。事業終了後、施設の所有権を公共側に移転。
  • BOO方式(Build, Own, Operate)
    ⇒施設の所有権は、事業期間終了まで民間事業者に帰属。事業終了後は、施設を撤去。

官民連携事業の内容に応じて、採用される方式は自ずと異なってきます。
地域の文化・歴史の展示施設の例であれば、一時的な展示であるような場合を除き、通常は、時限性のあるBOO方式は選択されないでしょう。また、観光客誘致をねらいとしており、採算性が重視されるということであれば、事業期間中の施設管理を全面的に委ねるBOT方式の採用に分があるといえるでしょう。

3 収益モデルに着目した分類

さらに、民間事業者がどのようにして対象の官民連携事業の収益化(マネタイズ)を図るのか、その収益モデルにも、複数の種類があります。例えば、以下のような類型があります。

  • サービス購入型
    ⇒民間事業者は、公共側から支払われるサービス購入対価を通じて、収益化を図る。
  • 独立採算型
    ⇒民間事業者は、公共施設等の利用者から徴収する利用料金等を通じて、収益化を図る。
  • 混合型
     ⇒民間事業者は、利用者から徴収する利用料金等及び公共側から支払われるサービス購入対価等を通じて、収益化を図る。

実際の案件では、いずれのモデルが適しているかを判断するためには、対象施設や事業の性質その他の事情を考慮することが必要になってくるでしょう。
先ほどの、地域の文化・歴史の展示施設の例であれば、BOT方式を採用した場合など、施設運営に採算性を求めるのであれば、サービス購入型は適切ではありません。他方で、入場者の利用料等のみで独立採算を図ることができるのかどうかは、施設の規模や展示の中身などをより詳しく見て検討する必要がありそうです。

PFIの案件の特性やスキームを理解するためには、まずは、今回のコラムで説明したようなPFIの類型の大分類を理解し、マクロ的な視点から事案を観察・分析することが有用です。

PPP/PFIチームでは、講演活動、研究会、質問会を行っています。また、独自のローン契約逐条解説資料をもとにしたコンサルティングも可能です。
ご要望に合わせてプランニングしますので、以下の弁護士名をクリックいただき、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

 (担当弁護士 藤田剛敬 /同 坂下良治 /同 鈴木康之 /同 鈴木一平