隼あすか法律事務所 ニュースレター 臨時(消滅時効期間等の改正)
2020年04月03日
今回は臨時ニュースレターとして【消滅時効期間等の改正】についてお届けします。 皆様におかれましては、新型コロナウィルス対応でご多忙な頃とは存じますが、2020年3月27日、参議院本会議で改正労働基準法が可決成立いたしました。 具体的には、 但し、施行後当分の間は、上記1.2.3.について、3年とするものとし、施行5年後に必要な措置をとるとの経過措置が設けられました。 (労務人事チーム/木下 達彦)
この改正は、債権法改正により使用人の給料についての短期消滅時効が廃止されたこと等を考慮し、賃金請求権等の消滅時効期間等を延長することとしたものです。
そして、施行日は2020年4月1日となっており、成立から極めて短期間に施行となりました。
なお、災害補償その他の請求権の消滅時効期間は2年で変更はありません。例えば、有給休暇はこれまでどおり2年で時効消滅します。
実務への影響ですが、これまで賃金請求権の消滅時効は、改正前は2年であったところ、2020年4月1日からは3年に延長されており、未払賃金請求や未払時間外手当請求があった場合には請求額が単純計算で1.5倍になるリスクが生じることになります。そのため、会社におかれましては、時間外労働等の労務管理がより一層要求されることとなります。
隼あすか法律事務所 ニュースレター 26号
2020年01月31日
隼あすか法律事務所 ニュースレター 臨時(パワハラ防止法)
2019年07月18日
隼あすか法律事務所 臨時ニュースレター【パワハラ防止法】についてお届けします。 2019年5月29日“パワハラ防止法”(労働施策推進法改正)が成立しました。ニュースにも取り上げられましたので、ご存知の方も多いのではないかと思います。この法律の画期的な点は、パワハラの定義を定め、企業に必要な措置を義務付けるなどを規定している点です。なお、業務上の指導との線引きが難しいことから、罰則は見送りになっております。主な内容は以下の表の通りです。 表 パワハラ防止法の概要 今後、厚生労働省において施行日までに指針を策定する予定ですので、指針の内容には注目する必要があります。 また、“パワハラ防止法”(労働施策推進法改正)の成立と同日に、セクハラ・マタハラや育児休業・介護休業についても、パワハラと同様の改正(男女雇用機会均等法、育児介護休業法、労働施策推進法の改正)がなされております。 (労務人事チーム/弁護士 木下達彦)
パワハラの定義
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境を害する行為」
措置義務
労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置が義務付け
不利益取扱の禁止
相談したこと、相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由とした解雇その他の不利益取扱の禁止
国の義務
優越的言動問題に対する広報活動、啓発活動その他の措置の講ずる努力義務
事業主の義務
優越的言動問題に対する従業員の関心と理解を深めるとともに、従業員が他の従業員に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をする、国の措置に協力する努力義務
自らも優越的言動問題に対する関心と理解を深め、従業員に対する言動に必要な注意を払う努力義務
労働者の義務
優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払う、事業主の講ずる措置に協力する努力義務
制裁
助言・指導、勧告に加え、企業名公表 (罰則は見送り)
施行日
公布日から起算して1年を超えない範囲内で定める
中小企業は公布日から起算して3年を超えない範囲内で定める日までは努力義務
【報道によれば、
大企業:2020年4月からパワハラ対策の義務化
中小企業:2020年4月から努力義務、2年以内に義務化】
厚労省の今後の動き
どのような言動がパワハラに該当するかの指針
取引先からのパワハラや顧客からの迷惑行為に関する指針
フリーランスや就職活動中の学生向けの対策を検討
このように、パワハラを含め、ハラスメントに対する規制が強化されておりますので、ご注意ください。
なお、事業主の義務として、従業員が他の従業員に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をすることが求められております。今回の改正を踏まえ、従業員様を対象としたパワハラ・セクハラ研修も当事務所で行っておりますので、ご相談をいただければと思います。
隼あすか法律事務所 ニュースレター 臨時(働き方改革関連法)
2019年05月30日
今回は臨時ニュースレターとして【働き方改革関連法の施行】についてお届けします。 時間外労働の上限規制、年5日の年次有給休暇の確実な取得、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保など、働き方改革を推進するための関連法律が、施行の段階に入りました。 もっとも、今般の働き方改革のめざすところは多岐にわたっているため、どの問題についていつから対応しなければならないのか、すなわち、法律の施行時期がわかりにくくなっています。 そこで、今回の改正のうちの主要なものについて、改正法の施行時期をご説明いたします。 ■時間外労働の上限規制 三六協定記載の時間外労働の限度時間が、1ヶ月45時間及び1年360時間(休日労働含まず)とされます。 施行時期は、2019年4月1日、ただし中小企業については2020年4月1日です。 ■1ヶ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%)についての中小企業への猶予措置の廃止 1ヶ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率は50%ですが(労働基準法37条1項但書)、中小企業には、この割増賃金率の適用はこれまで猶予されていました(労働基準法138条)。 この猶予の扱いが、2023年4月1日に廃止されます。 ■年5日の年次有給休暇の付与義務 使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうち5日について、年次有給休暇発生日から1年以内の期間に、労働者ごとに、年次有給休暇を、時季を指定して与えなければならないとされます(労働基準法39条7項)。 施行時期は、中小企業か否かにかかわらず、2019年4月1日です。 ■高度プロフェッショナル制度 高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務(金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務等)に従事し、高収入の労働者(※1)について、労働時間・休憩・休日や時間外・休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないとする制度です(労働基準法41条の2)。制度導入の際には、労使委員会で、対象業務、対象労働者、健康確保措置などを5分の4以上の多数で決議し、書面による本人の同意を得ることが必要となります。 施行時期は、中小企業か否かにかかわらず、2019年4月1日です。 ■雇用形態に関わらない公正な待遇の確保 同一企業内において、非正規雇用労働者について、正規雇用労働者との不合理な待遇差を禁止するものです(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条、9条等、労働者派遣法30条の3、30条の4等)。 施行時期は、パートタイム労働法、労働契約法については、2020年4月1日、ただし中小企業については2021年4月1日です。 ●中小企業の意義について これまで見たように、中小企業にあたるかどうかにより、改正法の施行時期が異なる場合があります。 小売業の場合・・・資本金の額または出資の総額が5,000万円以下 または 常時使用する労働者数が50人以下 時間外労働の上限規制と有給休暇取得の義務化は、すでに施行され、罰則規定も存在します。早急な対策が必要です。 何かお困りごと、悩まれていること等ございましたら、お気軽に弊所までご連絡ください。 (労務人事チーム/弁護士 伊藤稔彦)
また、臨時的な特別な事情がある場合でも、1年720時間以内(休日労働を含まず)、1ヶ月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月が限度と設定されます。
さらに、臨時的な特別な事情の有無にかかわらず、1年を通して常に、1ヶ月100時間未満(休日労働含む)、2〜6ヶ月平均80時間以内でなければなりません(以上、労働基準法36条3項ないし6項)。
(※1)使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金額に換算した額が、基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額(※2)以上である労働者をいいます。
(※2)1075万円以上と決定されました。
労働者派遣法については、中小企業か否かにかかわらず、2020年4月1日です。
中小企業にあたるかどうかは、業種ごとに、資本金の額や常時使用する労働者の数を考慮して判断されます。
中小企業に該当する会社は、以下の会社です(労働基準法138条)。
サービス業の場合・・・資本金の額または出資の総額が5,000万円以下 または 常時使用する労働者数が100人以下
卸売業の場合・・・資本金の額または出資の総額が1億円以下 または 常時使用する労働者数が100人以下
その他・・・資本金の額または出資の総額が3億円以下 または 常時使用する労働者数が300人以下
その他の事項についても、就業規則や賃金規程を見直すためには、短時間労働者・有期雇用労働者を含む労使の話し合いが必要となる場合があり、また、企業として原資などを検討しなければならないことがあります。
諸々の対応には相応の時間を要するため、計画的に進めることが求められます。